イントロダクション

ゴダールが畏敬した 最初で最後のヌーヴェル・ヴァーグ――

パリの街並み、地中海の陽光、きらめく砂浜、ロマンスに夢中の少女とうつろいゆく青春を謳歌しようとする男たち……。輝く季節を軽やかに大胆に切り取るジャック・ロジエの才能に、ヌーヴェル・ヴァーグの象徴であるゴダールは絶賛し、トリュフォーは嫉妬したという逸話をもつ。

今回の特集上映では、ジャック・ロジエ監督の長篇劇映画全5作品のうちデジタル・レストアされた4作品と短篇2作品を上映。長篇『トルテュ島の遭難者たち』と『フィフィ・マルタンガル』は劇場初公開となる。

ジャック・ロジェ/Jacques Rozier

1926年11月10日パリ―2023年6月2日テウル=シュル=メール。享年96歳。
高等映画学院(IDHEC)卒業。ジャン・ルノワール『フレンチ・カンカン』の撮影に実習生として参加。その後テレビ局で働きながら、初監督作となる短篇『新学期』(1955)を製作。1958年、トゥール短篇映画祭で上映された短篇第二作『ブルー・ジーンズ』がゴダールに絶賛され、ロジエはゴダールと親交を結ぶことになる。1960年、ゴダールからプロデューサーを紹介され、長篇第一作『アデュー・フィリピーヌ』の撮影を開始。同作は1962年、カンヌ映画祭・国際批評家週間に選出される。続く長篇第二作『オルエットの方へ』(1971、カンヌ映画祭・監督週間で上映)と長篇第三作『トルテュ島の遭難者たち』(1976)では、ロジエ作品の特徴となる夏のヴァカンスを描く。1986年、冬の週末の出会いをコミカルに描いた長篇第四作『メーヌ・オセアン』(1985)でジャン・ヴィゴ賞を受賞。2001年、長篇第五作であり最後の作品となってしまった『フィフィ・マルタンガル』をヴェネチア映画祭に出品。同年パリのポンピドゥー・センターではテレビ作品を含めた大規模なレトロスペクティヴが開催された。

上映作品

『アデュー・フィリピーヌ』(2Kレストア)

Adieu Philippine/1962年/フランス=イタリア合作/フランス語/モノクロ/110分/1.66 :1/日本語字幕:寺尾次郎 © 1961 Jacques Rozie

監督/ジャック・ロジエ 脚本/ジャック・ロジエ、ミシェル・オグロール 撮影監督/ルネ・マトラン 編集/ジャック・ロジエ、モニク・ボノ、クロード・デュラン 音楽/ジャック・ダンジャン、マキシム・ソーリー、ポール・マテイ 製作/ジョルジュ・ド・ボールガール
出演/ジャン=クロード・エミニ(ミシェル・ランベール)、イヴリーヌ・セリ(リリアーヌ)、ステファニア・サバティーニ(ジュリエット)、ヴィットリオ・カプリオリ(パシャラ)

1960年パリ。アルジェリア戦争のさなか兵役を数か月後に控えた青年ミシェルは、勤務先のテレビ局でリリアーヌとジュリエットという仲の良い二人の娘と出会う。二人は次第にミシェルに惹かれていくが、彼はどちらとも上手くやろうとする。そんな中、仕事でミスをしたミシェルは、兵役前にヴァカンスを楽しもうとテレビ局を辞め、二人に告げぬままコルシカ島へ旅立つ。

『トルテュ島の遭難者たち』(4Kレストア)

※劇場初公開

Les Naufragés de l’île de la Tortue/1976年/フランス/フランス語/カラー/146分/1.66 :1/日本語字幕:高部義之 © 1974 Jacques Rozier

監督/ジャック・ロジエ 脚本/ジャック・ロジエ 撮影/コラン・ムニエ 録音/ジャン=フランソワ・シュヴァリエ 音楽/ナナ・ヴァスコンセロス、ドリヴァル・カイミ 編集/ジャック・ロジエ、フランソワーズ・テヴノ 製作総指揮/ジャック・ロジエ 製作管理/ジャック・ポワトルノー
出演/ピエール・リシャール(ジャン=アルチュール・ボナヴァンチュール)、モーリス・リッシュ(太っちょノノ)、ジャック・ヴィルレ(プティ・ノノ)、キャロリーヌ・カルティエ(広報アシスタント)、アラン・サルド(支店長)、ジャン=フランソワ・バルメール(ノッティンガム)、ナナ・ヴァスコンセロス(ミュージシャン)、パトリック・シェネ、ピエール・バルー

パリの旅行代理店に勤めるボナヴァンチュールと同僚の「太っちょノノ」は、ロビンソン・クルーソーの冒険を追体験させる無人島ヴァカンスツアーを企画する。彼らはツアー候補地のカリブ海へ調査に向かうが、空港で「太っちょノノ」が逃げ出し、代わりに弟の「プティ・ノノ」がボナヴァンチュールに同行することになる。現地に着いた二人が無人島を探していると、パリから最初のツアー客がやってくるが、誰もボナヴァンチュールの言うことを聞こうとしない。

『メーヌ・オセアン』(4Kレストア)

Maine Océan/1985年/フランス/フランス語、ポルトガル語、スペイン語、英語/カラー/136分/1.66 :1/日本語字幕:寺尾次郎 © 1986 Jacques Rozier

監督/ジャック・ロジエ 脚本・台詞/ジャック・ロジエ、リディア・フェルド 撮影監督/アカシオ・ド・アルメイダ 録音/ニコラ・ルフェーブル 編集/ジャック・ロジエ、マルティーヌ・ブラン 音楽/シコ・ブアルキ、フランシス・ハイミ 製作/パウロ・ブランコ
出演/ベルナール・メネズ(検札長)、ルイス・レゴ(検札係)、イヴ・アフォンソ(プチガ)、リディア・フェルド(女弁護士)、ロザ=マリア・ゴメス(デジャニラ)、ペドロ・アルメンダリス・Jr(興行主)、マイク・マーシャル(森の中の弁護士)、ベルナール・デュメーヌ(裁判長)、ジャン=ポール・ボネール(検察官)、ユベール・デジェックス(ピアニスト)、アンヌ・フレデリック
1986年ジャン・ヴィゴ賞

ブラジル人ダンサーのデジャニラは、パリ発の特別列車「メーヌ・オセアン号」に飛び乗るが、検札係に罰金を命じられてしまう。フランス語が分からない彼女だが、たまたま通りがかった弁護士の女性に助けられる。翌日、弁護士に誘われ漁師の裁判に立ち会ったデジャニラは、その漁師が住む大西洋の島で週末を過ごすことにするが、そこに検札係もやって来て……。

『フィフィ・マルタンガル』(デジタル・レストア)

※劇場初公開

Fifi Martingale/2001年/フランス/フランス語/カラー/120分/1.85 :1/日本語字幕:高部義之 © 1997 Jacques Rozier

監督/ジャック・ロジエ 脚本・台詞/ジャック・ロジエ、リディア・フェルド 撮影/ジャン・クラヴエ、マチュー・ポワロ=デルペク 編集/ジャック・ロジエ、アンヌ=セシール・ベルノー 音楽/ラインハルト・ワグナー 製作/Antinéa 共同製作/CNC、CANAL+ 
出演/ジャン・ルフェーブル(ガストン)、イヴ・アフォンソ(イヴ)、リディア・フェルド(フィフィ)、マイク・マーシャル(劇作家/演出家)、ルイス・レゴ、フランソワ・シャト、ジャック・プティジャン、ロジェ・トラップ、ジャック・フランソワ、アレクサンドラ・スチュワルト、ジャン=ポール・ボネール

ブールヴァール劇『イースターエッグ』はパリで大ヒット中。この低俗な自作が権威あるモリエール賞を受賞したと知った劇作家は、これを何かの陰謀だと思い込み、上演中の戯曲を改変して「敵」に報復しよう企む。

『パパラッツィ』(2Kレストア)

Paparazzi/1963年/フランス/フランス語/モノクロ/22分/1.37 :1/日本語字幕:寺尾次郎、追加訳:高部義之 © 1963 Jacques Rozier

『バルドー/ゴダール』(2Kレストア)

Le Parti des choses : Bardot/Godard/1963年/フランス/フランス語/モノクロ/10分/1.37 :1/日本語字幕:寺尾次郎 © 1963 Jacques Rozier

1963年5月、ゴダール『軽蔑』の後半部分を占めるカプリ島での撮影現場を訪れたロジエは、そこで撮影したフッテージをもとに二本の短篇を製作する。
『パパラッツィ』では、ブリジット・バルドーを一目見ようと集まる群衆や、スクープ写真を狙うパパラッツィに焦点をあて、『軽蔑』を外側から捉えようとする。
『バルドー/ゴダール』では、作品の内側からゴダールの撮影美学に迫りながら、ロジエの作家性をも浮かび上がらせている。

公開記念トークショー

公開を記念してユーロスペースにてトークショーを開催いたします。

7月29日(土) 16:30『アデュー・フィリピーヌ』上映後
ゲスト:須藤健太郎さん(映画批評家)

7月30日(日) 16:40『メーヌ・オセアン』上映後
ゲスト:伊藤洋司さん(中央大学教授)

8月5日(土) 13:50『メーヌ・オセアン』上映後
ゲスト:大久保清朗さん(山形大学人文社会科学部准教授)

8月11日(金・祝) 13:50『フィフィ・マルタンガル』上映後
ゲスト:角井誠さん(映画研究、早稲田大学文学学術院准教授)

8月12日(土) 16:30『アデュー・フィリピーヌ』上映後 ※オンラインでの開催
ゲスト:ギヨーム・ブラックさん(映画監督)、坂本安美さん(アンスティチュ・フランセ映画主任/映画批評)

8月19日(土) 13:50『トルテュ島の遭難者たち』上映後
ゲスト:葛生賢さん(映画作家・映画批評家)

リピーター特典

2作品以上のご鑑賞で、作品数に応じてポストカードをプレゼントいたします。

◆2プログラム鑑賞
『アデュー・フィリピーヌ』
◆3プログラム鑑賞
『トルテュ島の遭難者たち』
◆4プログラム鑑賞
『メーヌ・オセアン』&『フィフィ・マルタンガル』


【実施劇場】
ユーロスペース

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